世界で一番似ている赤色
次の日。お母さんに連れられて行ったのは、夜景が見える高そうなレストランだった。
空いているテーブルは数席あるのに、男性と女の子が座っているテーブルへと案内される。
「初めまして。綾ちゃん」
「こんばんは!」
近づくと挨拶され、笑顔を向けられた。
男性は、スーツ姿でお母さんと同世代くらい。
女の子は、あどけない表情で背も低く、小学生に見えた。
この2人は親子、とのこと。
「綾、挨拶しなさい」
お母さんにそう促され、しぶしぶ自分の名前を名乗り会釈をしてから、席についた。
男性は自然と気を遣えるタイプっぽく、料理の注文をリードしてくれた。
女の子は澄花ちゃんという名前で、てきぱき料理を取り分けてくれた。
楽しそうに会話をするお母さんに対し、1人もくもくと料理を食べるわたし。
生ハムサラダやポークジンジャーの美味しさを噛みしめ、疎外感を打ち消した。
時々男性から、何年生なの? 来年は受験だね、などとテンプレ的な話題を振られる。
「はぁ……そうですね」
性格上、初対面の人に心を開けるわけもなく、無愛想な答え方しかできない。
「この子人見知りなのよ、ごめんなさいね~」
すかさずお母さんがフォローしてくれた。
1人だけ緊張している自分が恥ずかしくて、ひざに置いたナプキンをぎゅっと握りしめた。
「ね、どうだった? いい人でしょ」
家に帰るとすぐにお母さんに感想を求められた。
「うん、いい人だったね。澄花ちゃんもしっかりしてるし。……お母さんの好きにしなよ」
そう伝えると、お母さんは安心した表情になり、わたしを抱きしめた。