世界で一番似ている赤色


「で。なにがあったの?」


「いっぱいありすぎてもうわかんない」


「じゃあいっぱい喋っていいよ。全部聞くから」



その言葉がトリガーになった。



涙とともに、苦しい思いを吐き出した。


あだ名を否定されたこと、友達に突き放されたこと、授業サボってお母さんに怒られたこと。


そして、新しい家族ができること、転校するかもしれないこと、苗字が変わることも。全部。



話が行ったり来たりする。支離滅裂になる。


なのに、優にぃは流れる電車を眺めながら、静かに聞いてくれた。


さすがに家族の話になった時は、考え込んだ表情になったけれど。



涙が止まり、気持ちも落ち着いてきた頃。


優にぃはぼそりと言葉を発した。



「学校でのトラブルの話だけどさ」


「うん?」


「こんなこと言うのもあれだけど、転校したらリセットできるよ? 人間関係」


「あ……」



確かにその通りだ。


逃げかもしれないけれど、このタイミングでの転校はありがたい。


一から全部やり直せるチャンスだ。



だけど……



『サーヤちゃんって呼んでいい?』



親しみを込めてそう呼んでくれたこと、本当に嬉しかった。


心をなかなか開けないわたしに、向こうから踏み込んできてくれた。

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