世界で一番似ている赤色


うーん、と頭をかかえ悩むわたし。


そんなわたしを見かねてか、優にぃは


「心残り、あるんでしょ?」と口にした。


すぐ「うん」と頷く。



「でも上手くいかないかもしれない。わたし嫌われたし……」


「転校の日まで頑張ってみたら? 一生懸命やって無理なら仕方ないってことで」



わたしはサーヤちゃんというあだ名を気に入っていた。


ダサいなんて思っていない。


知らないところで誤解が生まれていた。それは解消したい。


離れる前に、ありがとうって感謝を伝えたい。



「うん!」



力強く返事をすると、優にぃはやわらかく笑った。



公園の時計は夜9時をさしていた。


木々の奥に広がる夜空には、粒状に星がまたたいている。



優にぃは座ったまま、あーあ、と両腕を夜空へ伸ばした。



「そっかー。綾はまた苗字変わるんだ」


「3回目だよ。多すぎ。あはは……」



自分の乾いた笑い声が公園に響く。


優にぃは、伸びをしたまま横目でわたしを見た。


階段に映った優にぃの影が、わたしへと近づいたかと思えば、頭に手が乗せられた。


ドキッとする間もなく、ぐしゃぐしゃと髪の毛が乱された。


優にぃの中にも複雑な気持ちが生じていることに気がついた。


< 38 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop