世界で一番似ている赤色
うーん、と頭をかかえ悩むわたし。
そんなわたしを見かねてか、優にぃは
「心残り、あるんでしょ?」と口にした。
すぐ「うん」と頷く。
「でも上手くいかないかもしれない。わたし嫌われたし……」
「転校の日まで頑張ってみたら? 一生懸命やって無理なら仕方ないってことで」
わたしはサーヤちゃんというあだ名を気に入っていた。
ダサいなんて思っていない。
知らないところで誤解が生まれていた。それは解消したい。
離れる前に、ありがとうって感謝を伝えたい。
「うん!」
力強く返事をすると、優にぃはやわらかく笑った。
公園の時計は夜9時をさしていた。
木々の奥に広がる夜空には、粒状に星がまたたいている。
優にぃは座ったまま、あーあ、と両腕を夜空へ伸ばした。
「そっかー。綾はまた苗字変わるんだ」
「3回目だよ。多すぎ。あはは……」
自分の乾いた笑い声が公園に響く。
優にぃは、伸びをしたまま横目でわたしを見た。
階段に映った優にぃの影が、わたしへと近づいたかと思えば、頭に手が乗せられた。
ドキッとする間もなく、ぐしゃぐしゃと髪の毛が乱された。
優にぃの中にも複雑な気持ちが生じていることに気がついた。