世界で一番似ている赤色
「優にぃは? 家の方はどう?」
思い切って彼に家の話を振ってみた。
「俺は男同士うまくやってるよ。あ、お父さん仕事頑張ってて、出世するかもだって」
「本当? すごいじゃん!」
「全然女っ気ないのは逆に心配だけど。まあ毎日充実してるみたいだしいいんじゃない? って感じ」
そっかぁ、とこぼすと、優にぃはわたしの頭をぽんぽんと優しく叩いた後、立ち上がった。
続いてわたしも立ち上がる。
もう別れの時間なのだろうか。
胸が切なくなり、彼のジャージの裾をきゅっと握った。
「やだよ……」
「……綾?」
「わたし、しばらく優にぃに会えなくなる。なるべく家にいてって言われてるし、引っ越しもあるし。そんなの嫌だよ……っ」
もうすぐ環境ががらりと変わる。
新しい学校、新しい家族、新しい生活。
上手くやれるか不安だし、優にぃとのつながりが薄くなっていくようで、悲しい。
声と肩を震わせるわたし。
対する優にぃはぷっと吹き出した。
「ちょ、引っ越し先って隣町でしょ? いつでも会えるじゃん」
彼は笑いながら、フェンスの奥、駅へと入っていく各駅停車の車両に目を向けた。
「また、会ってくれるの?」
「そりゃー綾が会いたいって思うなら、俺は」
「じゃなくて、優にぃは? 部活忙しいでしょ? バイトも始めたんでしょ? しかも、わたし別の街に行くし、家族も変わるのに。これからもわたしに会ってくれるの?」
軽い口調で返されたため、心配に思っていたことをぶつけた。