世界で一番似ている赤色
優にぃは優にぃの生活があるのに、わたしに何度も会ってくれて、話を聞いてくれる。
もし迷惑に思われていたら。
もう終わりって言われたら、どうしよう。
「当たり前じゃん」
でも、不安な気持ちは、彼の力強い言葉がかき消してくれた。
「何があっても、俺と綾のつながりは消えない。そうでしょ?」
「うん! そうだよね!」
嬉しくて、前のめりで返事をしてしまう。
すると――
「うわっ!」
そのはずみで、階段から足を滑らせてしまった。
体のバランスが崩れる。
目の前にいる優にぃのもとへ飛び込むしかなかった。
彼は「えっ?」とびっくりした声をあげつつも、わたしをしっかり受け止めてくれた。
「…………」
事故とはいえ、優にぃに抱きつく形になる。
その腕や体は、わたしよりも大きくて、力強くて、温かくて。
びっくりしたし、安心した。
離れられないでいると、両腕がまわされ、ぎゅっと強く抱きしめられた。
「消せないんだよなぁ」
快速電車が駅を通り抜けたらしい。
ガタンガタンという激しい音の隙間から、優にぃのつぶやき声がした。
「優にぃ?」
どうしたのかなと思い、わたしも彼の背中に手を回した。
すると、ぽんぽんと一定のリズムで後ろから頭を撫でられた。
「綾なら大丈夫だよ。頑張れ~」
「お~充電されてる感じする! なんか頑張れそうかも!」
お互い冗談ぽい会話を交わしてはいたけれど。
わたしの中では、ドキドキと鼓動が激しくなっていた。