世界で一番似ている赤色
「そういえば。お前。これ知ってる?」
彼はポケットからスマホを取り出した。
見せられたのはクラスのグループライン画面。
「俺が変に口出ししたらまたお前が嫌な思いするかと思って、何もできなかった。ごめん」
スマホを持っているのはクラスの半分くらい。
もちろん上位の女子たちはみんな持っている。
そのグループラインは、自分たちが優位にいられるよう、誰かを落としいれるような言葉や過剰ないじり、悪口が飛び交っていた。
スマホを貸してもらい、ログをさかのぼる。
すぐ、ある会話が目に入った。その瞬間、悲しさと怒りがこみ上げた。
『サーヤちゃんってあだ名、ウケる』
『それ、ダサいから呼ばないでほしいって、綾ちゃん思ってるらしいよ』
『うーわ。それひどいね』
『友達いないくせに調子乗りすぎ』
『でもそのあだ名、ぶっちゃけダサいよねw』
――そうか。
だから友達に言われたんだ。
『綾ちゃん、やっぱりダサいって思ってたんだ』って。
きっと、友達はこのラインを見たか、噂で聞いていたんだ。
悪意を持った誰かによるでっちあげなのに。
唇を噛みしめていると、
「それ嘘でしょ。お前、そういうこと言うヤツじゃないじゃん」
と、大和くんはぼそりとつぶやいた。
「え?」
「……や、その。俺、お前のこと昔から知ってるから」
彼は恥ずかしいのか、かたくなに道の先を見つめている。
自分で言ったことに対して、自分で照れているらしい。