世界で一番似ている赤色


その様子を見ていると、ある記憶を思い出した。



小学校からの帰り道。


大和くんじゃない男子にランドセルを奪われた時のこと。


彼はなぜかそのランドセルを奪い返してきてくれた。


わたしが『ありがとう』と伝えると、なぜか彼は『うるせー』と言って、そのランドセルを砂場へとぶん投げた。


結局、わたしは泣くハメになったけれど、あれは彼なりにわたしを助けてくれたんだ。きっと。



「大和くん!」



わたしの大声にびっくりしたのか、「ええっ!?」と彼は声を裏返らせた。



「これ、教えてくれてありがとう! よかったらライン交換しない?」



昔は大っ嫌いだったけれど、今、わたしのために心を痛めてくれている。


不器用すぎるけど、悪い人ではないらしい。


きっかけがあれば、いい友達になれたかもしれない。



「お前スマホ持ってんの?」と驚く大和くんに向けて、わたしはラインのQRコード画面を出したスマホを差し出した。



「スマホ持ってるなら早く言えよ」


「わたし、心を開ける人としかライン交換しないって決めてるの」


「は? ゲホッ、ゲホッ、ごめん、むせたわ」



大和くんはなぜかテンパりながら、わたしのQRコードを読み取った。



1つ目の心残りミッションはこれでクリアだ。


残りは、あと1つ。

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