世界で一番似ている赤色
わたしも自分の制服に身を包む。
近所の公立中学の制服は、前の中学のよりはマシだけど、澄花ちゃんのには負ける。
紺一色のセーラー服。形は可愛いけど地味。
「んー。なんかバランス悪いなぁ」
最高学年になったから、少しはスカート短くしてもいいよね。
そう思い、スカートのウエストを一段折り、鏡の前で一周回ってからリビングへ向かった。
――懐かしい夢、見ちゃったな。
早足で階段を下り、リビングの扉を開けた。
「綾ちゃん、おはよう」
「おはようございます」
新聞紙片手に朝食をとっている豊さんに挨拶を返す。
敬語じゃなくていいよ、と何回も言われたけれど、新しいお父さん――豊さんには、なんとなく丁寧な言葉遣いをしてしまう。
「綾どうしたの? 具合でも悪い?」
「や、昨日、遅くまで勉強してて……」
「そう? 無理しないでね」
心配そうな顔で味噌汁をよそうお母さん。
ありがとうと伝え、わたしも食卓についた。
再婚してから、お母さんに勉強しなさいと言われることが少なくなった。
テストの順位も下がってきているのに、スマホは取り上げられていない。
きっと、家庭の事情でわたしを振り回したことに、申し訳なさを感じているのかも。
「もぐもぐ、今日夜練あるから遅くなるよ」
「こら、澄花ちゃん。食べながらしゃべらないの!」
「そうだ。週末に澄花のラケット買いにいくけど、綾ちゃんも一緒にどう?」
「あ、わたし、友達と遊ぶ予定あって……」
「お姉ちゃん、もしかしてデート?」
「違うよ、女の子と遊ぶの! もう!」
こんな感じで、家族と囲む食卓は会話が多い。
最初は慣れなかったけれど、豊さんも澄花ちゃんも明るくていい人で、わたしも輪に入ることができていた。
2人にどう思われているかは分からないけれど、上手くはやれていると思う。