世界で一番似ている赤色
静かな日本庭園内に、自分の大声が響いた。
優にぃは驚いたのか、猛スピードで振り返る。
そのまま、こつり、とゲンコツが額に落とされた。いたっ!
「彼女、できるわけないじゃん。予定ない日は綾と会ってるし」
「……なにそれ。わたしのせい?」
「そうかも」
「だったらしばらく会わない方がいい?」
「…………」
「しょうがないよね、優にぃも彼女ほしいよね。わたしじゃなくてもっと大人っぽい人の方が似合いそうだし……」
しゃり、と足元の砂利が音を出した。
わたしじゃなくて、優にぃのスニーカーによるものだった。
距離が近づき、チラッと顔を上げる。
なぜか彼は口元に手を当て、笑いをこらえていた。
「あのさ、もしかして俺のこと試してる?」
「ち、ちがうよ!」
「へーそっかぁ。綾もいじわる言うようになったんだね」
「ちがうって!」
恥ずかしくて顔を熱くさせていると、優にぃは手を伸ばしてきた。
ドキッとした。頭をぽんぽんしてくれると思った。
でも、「これ似合ってる」と言いながら、ふわりとお団子に触れただけ。
そのまま、腹減ったーと伸びをして、彼は先へ進んでいった。
今日、お団子頭にしてきたことをちょっとだけ後悔した。