世界で一番似ている赤色


――あはははっ!



豊さんが帰ってきたらしく、ドア越しに家族3人の楽しそうな声が聞こえてきた。


わたしの部屋だけが別の空間のよう。


かと言って、家族の気を引く行動をとる気力も勇気もない。



宿題をしようにも集中できず、ベッドに転がり、スマホを手にした。


朱里ちゃんや前の中学の友達とメッセージやスタンプを送り合う。


しかし、一通りラインを終えても、空しさは埋まらなかった。



どうしよう……。



どくん、どくん、と自分の心臓の音を感じる。


ここで頼ってしまったら、わたしは子どものままだ。


去年よりも心が安定したと思っていたのに。


『心配される存在』から、『一緒に楽しめる存在』になれたと思ったのに。



枕にうずもれ、目を閉じる。



『彼女、できるわけないじゃん。予定ない日は綾と会ってるし』


『へぇー綾も言うようになったね』



ううん。まだ大丈夫だ。


思い出すだけで、心が温かくなる。早く会いたくて切なくもなるけれど。



次は優にぃとどこに行こうかなー。


デートスポットが紹介されているサイトを見て、その日は眠りについた。


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