世界で一番似ている赤色
3
☆
梅雨に入り、空は重たそうな雲で覆われていた。
各駅停車の電車に乗り、4つくらい駅を通り過ぎる。
街と街の間にある、一度も降りたことのない5つ目の駅。そこが優にぃの家の最寄り駅。
『東口出て階段下った先のコンビニいる』
住宅地のため、人が増えるのは電車が来る前後だけ。
一緒に降りた人たちが一通りいなくなってから、わたしも改札を抜けた。
ロングスカートを引きずらないよう、裾を持ち上げ階段を下る。
コンビニの窓越しに、漫画を立ち読みしている優にぃの姿が見えた。
左右にステップを踏んで近づいても気づかれない。集中しているみたい。
彼の様子を少しだけ楽しんでから、窓をコンコン叩いた。
ガラス越しに目が合う。
「ぷっ!」
すごい勢いで顔をそらされた。
友達と研究を重ねた変顔は、きっと、今この瞬間のためのもの。