世界で一番似ている赤色
「え? もしかして無くしちゃった?」
「そもそもアルバム代払ってないしもらってない。俺も一応映ってるらしいけど」
床に散らばったチェキ写真を集めながら、ぼそりと彼は言う。
誰もが手にするものだと思っていた。
わたしも小学校のアルバムは本棚の奥の奥に残してはいる。
「それ……どういうこと?」
「うん。綾には言ってなかったけど、俺中3の時、学校行ってない時期あったから」
横目でわたしを見ながら、優にぃは淡々と言葉を発する。
「……え」
初めて知った優にぃの過去。
息を飲みながら、彼の言葉を待った。
「中学最後の大会前にケガしてレギュラー外されて。試合出させてくださいって監督にお願いしたら、お前の代わりはいくらでもいる! って言われて、全部どうでもよくなった感じ」
「なにそれ……ひどい」
「しかも、引退してから受験勉強始めたけど、全然うまくいかなくて、模試もボロボロで、でも友達みんな勉強頑張ってて、俺だけついていけなくて」
聞くと、部活引退後しばらく、学校に行ったり行かなかったりを繰り返していたそう。
無気力な日々が続き、部屋に引きこもるようになった。友達も離れていった。
そんな彼を見かねたOBの先輩が、A北来いよと何度も誘ってくれたことで学校に復活でき、受験もなんとかなった、とのこと。
「今思うと思春期ってやつじゃない? 自分が誰からも必要とされてない気がして、全部やる気なくなった感じ」
衝撃的な内容なのに、彼は全く感情を動かさない。
逆にわたしの目に涙がたまってしまう。