世界で一番似ている赤色


優にいはわたしにとって必要な存在だ。きっと他にも彼を必要としている人はたくさんいる。


その事実は絶対だ。1つの声に捕らわれすぎたらダメだ。



『綾、お母さんと2人で頑張っていこう』


『なんでわたししかいないの? 嫌だ! 嫌だ!』


『事情が変わったの。これはあの子も望んだことなの。綾、わかってくれる?』



わたしが知らない間に、物事は進んでいた。


泣いてもわめいても、叶うことは無かった。その代わり、時々会う機会をもらった。


より引っ込み思案になったわたしに、彼はいつも笑顔で接してくれた。


本当は傷ついていたくせに。全然そんなそぶりを見せなかった。



「わたし、もっと早くスマホ買ってもらえばよかった」


「ん?」


「優にぃが苦しんでた時に一緒にいれなくて、悔しい」



きっと、優にぃはわたしが望む限り、一緒にいてくれる。


だって世界で一番彼を必要としているのは、わたしだから。そこには自信がある。



でも、それだけじゃ物足りなくなった。


わたしだって優にぃを温めてあげたい。


優にぃもたまにはわたしを頼ってほしい。



「わたし、優にぃのこといっぱい知ってるから、少しは力になれたかもしれない。だって、去年わたしも学校嫌だったけど、優にぃと会えたことで何とか持ちこたえたんだよ? 感謝してるし、わたしだって優にぃを……っ」



感情が高ぶる。涙が一粒こぼれる。


ここで泣いたら負けなのに。わたしだって強くなりたいのに。

< 70 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop