世界で一番似ている赤色
優にいはわたしにとって必要な存在だ。きっと他にも彼を必要としている人はたくさんいる。
その事実は絶対だ。1つの声に捕らわれすぎたらダメだ。
『綾、お母さんと2人で頑張っていこう』
『なんでわたししかいないの? 嫌だ! 嫌だ!』
『事情が変わったの。これはあの子も望んだことなの。綾、わかってくれる?』
わたしが知らない間に、物事は進んでいた。
泣いてもわめいても、叶うことは無かった。その代わり、時々会う機会をもらった。
より引っ込み思案になったわたしに、彼はいつも笑顔で接してくれた。
本当は傷ついていたくせに。全然そんなそぶりを見せなかった。
「わたし、もっと早くスマホ買ってもらえばよかった」
「ん?」
「優にぃが苦しんでた時に一緒にいれなくて、悔しい」
きっと、優にぃはわたしが望む限り、一緒にいてくれる。
だって世界で一番彼を必要としているのは、わたしだから。そこには自信がある。
でも、それだけじゃ物足りなくなった。
わたしだって優にぃを温めてあげたい。
優にぃもたまにはわたしを頼ってほしい。
「わたし、優にぃのこといっぱい知ってるから、少しは力になれたかもしれない。だって、去年わたしも学校嫌だったけど、優にぃと会えたことで何とか持ちこたえたんだよ? 感謝してるし、わたしだって優にぃを……っ」
感情が高ぶる。涙が一粒こぼれる。
ここで泣いたら負けなのに。わたしだって強くなりたいのに。