世界で一番似ている赤色


「あー、やっぱり泣いちゃった」



あきれた口調ながらも、その視線は温かくて。


ぽんぽんと頭を撫でてくる手も優しくて。



「うぅ、それダメ……」



ぽろぽろと涙が止まらなくなってしまう。


「よしよーし」と優にぃはわたしを引き寄せ、胸を貸してくれた。


抱きしめられたのに、彼の態度は子どもをあやすような感じ。


いつまでもわたしは彼に心配される存在だ。悔しい。



「っく。どうしてわたしが慰められてるの? おかしいよね? ごめんなさい~うぅ」


「慰めてるわけじゃないよ」


「……へ?」



彼は腕をわたしの背中に回し、ぎゅっと強く抱きしめた。



「俺だってこうしてると、安心する」



降ってきたのは、弱々しくて、切なげな声。


わたしの知らないところでたくさん苦しんでいた。


その上で今、わたしと一緒にいてくれる。抱きしめてくれる。


胸がきゅんと苦しくなった。



「……うん」



心臓の音が早い。


彼の体から伝ってくる音も、同じくらい早い。


くっついた部分が次第に熱くなっていく。



しかし、彼の温もりに溺れそうになった瞬間。


ぐ~、お腹の音が鳴った。連鎖して彼のお腹も鳴る。



ぱっと離れ、お互い顔を見合わせて笑った。



「優にぃ、普段何食べてるの? この家、誰もご飯作らないでしょ」


「一応、部活ない日は俺が簡単なの作るけど、ほとんどスーパーの総菜や、コンビニ弁当」


「そっかぁ。じゃあ、今日はわたしが作ろっか!」

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