世界で一番似ている赤色
フライパンまだぬるってる。やり直し。
いいじゃん、乾いたら一緒でしょ。
違うよ! 後々べたつくの!
などと楽しく洗い物をしている途中だった。
「ただいまー」
バタン、と廊下の奥から、扉が閉まる音がした。
どすどすと、大きな足音が近づいてくる。
どうしよう、お父さんが帰ってきちゃったんだ!
ふきん片手に、1人あわあわするわたし。
対する優にぃは、「大丈夫だから。俺に任せて」とこっそり言い、蛇口をきゅっと閉めた。
「おかえり。早かったね」
「雨でゴルフ早めに終わってさー……って。え?」
ぼさぼさ頭にポロシャツ姿。そりきれていない髭。
懐かしさにつんと胸が痛む。
「ええっ!? 綾……ちゃん、だよね?」
「お久しぶりです」
「やっぱり! 大きくなったねー!」
なぜわたしがここにいるか。
普通ならこれを真っ先に聞くんだろうけど、違った。
驚きながらも、優しい目をわたしに向けてくれた。
そういうとこと、優にぃと少し似ている。もちろん目元も。