世界で一番似ている赤色
「進路のことで相談したいって、綾から久々連絡あったから」
「そっか、綾ちゃんももう中3か~」
しみじみとした余韻を持った話しぶり。
なのに、わたしと上手く目を合わせられないようで、頭をもしゃもしゃし出す。
寒かったのか、鼻水をすする音をさせながら。
「とりあえずシャワー浴びてきたら?」
「お、おう。そうするわ……ぶぅうぇっくしょいっ! あーこんちきしょ」
部屋が震えそうなほどの大きなくしゃみ。
思わず笑みが漏れた。
しばらくするとシャワーの音が聞こえてきた。
「じゃ、今のうちに駅まで送るわ」
「え? わたしもうちょっと……」
「父さんびっくりしてるし、今日はもう行こ」
「待って!」
せっかくだし、卵使って何かを作ってあげたい。
ささっと作れそうなもの。えーと。
洗ったばかりのフライパンを取り出し、火を点けバターを引く。
必死に混ぜ合わせ泡立てた卵を熱したフライパンへ注入。
卵が固まっていく。お父さんはまだお風呂から出てこない。
形はくずれちゃったけどまぁいっか。
皿にべちゃっと盛り、ケチャップで文字を書いた。
「これ読める?」
ニコッと笑い、優にぃを見上げる。
オムレツと皿に書かれた赤い文字を見て、彼もふわっと笑った。
「血文字みたい」
「ひどーい!」
――『あやはげんきです』