世界で一番似ている赤色
雨は上がっていて、アスファルトからは土の香りがした。
「楽しかった。いろいろびっくりしたけど」
「そっか。良かった。父さん変わってないでしょ。でもああ見えて仕事かなり頑張ってるよ」
「仲いいの?」
「まあ、お互いあんま口出ししないからね。さすがに学校行かなくなった時は心配されたけど」
ちぎれた雲から夕日が差し込んでくる。
オレンジ色に照らされた彼は道路の先を見ながらこう続けた。
「でも、ガミガミ言わないで、俺から話すの待ってくれた」
「そうなんだ」
わたしも家のことはいろいろある。
テストの成績が下がってもお母さんは何も言ってこない。
親の期待がわたしから澄花ちゃんに移ったのは、寂しいけれど。
再婚してからお母さんと向き合って話はしていなかった。わたしの気持ちを伝えていなかった。
もし伝えた上で、それでも無関心だったらどうしよう。
でも、澄花ちゃんがどうあろうと、わたしはわたしらしくいたい。
本当は勉強を頑張って、朱里ちゃんと同じ高校に行きたい。