世界で一番似ている赤色



雨は上がっていて、アスファルトからは土の香りがした。



「楽しかった。いろいろびっくりしたけど」


「そっか。良かった。父さん変わってないでしょ。でもああ見えて仕事かなり頑張ってるよ」


「仲いいの?」


「まあ、お互いあんま口出ししないからね。さすがに学校行かなくなった時は心配されたけど」



ちぎれた雲から夕日が差し込んでくる。


オレンジ色に照らされた彼は道路の先を見ながらこう続けた。



「でも、ガミガミ言わないで、俺から話すの待ってくれた」


「そうなんだ」



わたしも家のことはいろいろある。


テストの成績が下がってもお母さんは何も言ってこない。


親の期待がわたしから澄花ちゃんに移ったのは、寂しいけれど。


再婚してからお母さんと向き合って話はしていなかった。わたしの気持ちを伝えていなかった。



もし伝えた上で、それでも無関心だったらどうしよう。


でも、澄花ちゃんがどうあろうと、わたしはわたしらしくいたい。


本当は勉強を頑張って、朱里ちゃんと同じ高校に行きたい。

< 76 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop