世界で一番似ている赤色
ええっ? わたしが? 優にぃを? 名前で?
今まで呼び捨てしたことないよ!
どぎまぎしたものの、夕日に照らされたグレーの雲がきれいで。
すぐ隣にいる彼の顔が少しだけこわばっていて。
一回下を向いてから、もう一度彼を見上げた。
「……優」
車の音でかき消されればいい。
そう思ったのに。
彼は目を細め、わたしをやわらかな視線で包んだ。
「ん。どーした? 綾」
「呼んでみただけ」
「俺も。言ってみただけ」
切なげで、でもどことなく甘い声。
胸がきゅっと締め付けられる感覚がした。
信号が青になる。どちらからともなく手が触れる。
ほんのり彼の顔も染まっているように見えた。
そのまま手をつないで、駅へと向かった。
「誰かに見つかっちゃうよ」
「いいよ、別に」
つながれた手は、あったかかくて、自分の体の一部みたいで。
ずっと昔から、わたしと優にぃはこうやって手をつなぐことが必然なんだ、とさえ思った。
安心した。でも、苦しかった。