世界で一番似ている赤色
次の机を戻そうと思い、彼の横をすり抜けると、
「じゃなくて、何でお前しかやってないの?」
という声に追いかけられた。
わたしに言われても……と思いつつ、仕方なく振り返る。
今年のクラス替えがハズレだった理由は、学年で目立つ女子グループが一緒であることと、苦手なこの男子と同じクラスになったこと。
小学生の頃、髪の毛を引っ張られたり、お気に入りのペンケースをぶん投げられたり。たくさんの嫌がらせをされた。
何も言い返せず、泣くことでしか抵抗ができない自分が悔しかった。
そんな時は決まって、優にぃが助けてくれた。
優にぃは怒ると意外と怖いため、同級生の男子たちはみんなビビっていた。
高学年になりクラスが離れてからは、いじめっ子だった彼もわたしと距離を置いてくれた。
今では背が伸びて、2年なのにサッカー部のレギュラーで、彼に憧れる女子までいる。
だけど、わたしにとっては未だに苦手な存在。
そんな彼――大和くんが、冷たい目でわたしを見つめていた。
「わたしがやらなきゃ終わらないでしょ。掃除」
「それ、答えになってねーよ」
「…………」
これ以上は会話しないことにした。
無言で手と足を動かし、ほっといてほしいアピール。
大和くんもわたしに構ってないで、早く部活行けばいいのに。