世界で一番似ている赤色
夜中。階段下にリビングからの光が漏れていた。
ドア越しに、お母さんと豊さんの声が聞こえてくる。
もそもそと聞こえづらかったが、『綾のことなんだけど……』と耳に入り、息を飲んだ。
ゆっくり階段を下り、集中する。
「私、家の事でいろいろ振り回したから、綾には厳しく言えなくなった。もともと強くない子だから。再婚前にも1回ガツンと怒ったら、家出て行かれたこともあるし……」
「そうか。でも心配なら向き合うべきじゃないか? 俺も澄花の受験の時はかなり厳しくやったぞ」
「そういえば綾とよく遊んでる朱里ちゃんって子、悪い子じゃないよね。親御さんはいい人だけど……なんか心配で」
「綾ちゃんのこと、少しは信じてあげたらどうだ?」
「だってあんなに成績悪いの初めてだったから。心配するのも当然よ」
これ以上聞きたくなくて、静かに自分の部屋へと戻った。
成績が下がった理由は色々ある。
澄花ちゃんを見ていると、自分が努力しても無駄だと思えたから。
でも、それ以上に夜中まで友達や優にぃとラインしたり、遊びに行きたい場所を調べたり、髪型やネイルを研究したり。
わたしが怠けていたせいだ。
お母さんはお母さんなりにわたしを心配している。
豊さんもわたしの気持ちを尊重してくれる。
それは嬉しかった。
だけど、優にぃとの時間はわたしにとって必要なものだ。
上手くやらなきゃ。
お母さんだけには、絶対にバレちゃいけない。