世界で一番似ている赤色



夜中。階段下にリビングからの光が漏れていた。


ドア越しに、お母さんと豊さんの声が聞こえてくる。


もそもそと聞こえづらかったが、『綾のことなんだけど……』と耳に入り、息を飲んだ。



ゆっくり階段を下り、集中する。



「私、家の事でいろいろ振り回したから、綾には厳しく言えなくなった。もともと強くない子だから。再婚前にも1回ガツンと怒ったら、家出て行かれたこともあるし……」


「そうか。でも心配なら向き合うべきじゃないか? 俺も澄花の受験の時はかなり厳しくやったぞ」


「そういえば綾とよく遊んでる朱里ちゃんって子、悪い子じゃないよね。親御さんはいい人だけど……なんか心配で」


「綾ちゃんのこと、少しは信じてあげたらどうだ?」


「だってあんなに成績悪いの初めてだったから。心配するのも当然よ」



これ以上聞きたくなくて、静かに自分の部屋へと戻った。



成績が下がった理由は色々ある。


澄花ちゃんを見ていると、自分が努力しても無駄だと思えたから。


でも、それ以上に夜中まで友達や優にぃとラインしたり、遊びに行きたい場所を調べたり、髪型やネイルを研究したり。


わたしが怠けていたせいだ。



お母さんはお母さんなりにわたしを心配している。


豊さんもわたしの気持ちを尊重してくれる。


それは嬉しかった。



だけど、優にぃとの時間はわたしにとって必要なものだ。



上手くやらなきゃ。


お母さんだけには、絶対にバレちゃいけない。


< 80 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop