世界で一番似ている赤色
下りのエレベーターが到着した。
ちょうど人の波が途切れていて、中に入っていた人が降りると、エレベーター内は空っぽになった。
ぴょんと飛び乗る。優にぃが続く。
わたしは急いで『閉』ボタンを押した。
このエレベーターはレストランフロア直通のため、1階まで止まらない。
ガラス張りのつくりになっていて、外ではビルの灯りや看板がキラキラ光っていた。
「ねー帰る前にプリ撮ろうよ」
「あれ加工されすぎで俺苦手」
「じゃあ写真!」
「まあ、いいよ」
「やったー」
お互い写真は撮り合うものの、2人で一緒に撮ったことはない。
彼からの許可が出て、テンションがあがった。
スマホを手にして、思いっきり腕を伸ばす。
手の角度を変え、2人がすっぽり入るよう画面を調整する。
うーん。お互い離れていて、上手く収まらないなぁ。
そう思い、肩を彼の二の腕のあたりにくっつけた。でも2人の間にはまだ距離がある。
「ねぇ、もっと近づいてよ」
「えー……こう?」
優にぃの顔が近づく。こめかみに彼の頬が触れる。
近すぎてびっくりしたものの、後ろ髪が優しく撫でられ、ふわりと心が跳ね上がった。
スマホのシャッター音を鳴らし、今の時間を閉じ込めた。
画面に映ったわたしたちは、どう見ても恋人同士だった。