世界で一番似ている赤色
「待ってよ!」
慌ててわたしも降りたものの、声は届かない。
いろんな感情が心を突き刺してきて、涙が出そうになった。
自分の唇を指でなぞる。触れ合った感覚がよみがえる。
キス、したんだ。
いっそのこと余韻に溺れてしまいたい。
だけど、罪悪感が押し寄せてきてそれを許さない。
ものすごく幸せなことをしたはずなのに、ものすごく悪いことをした後のような感じ。
もしかしたら、優にぃもそうだったのかもしれない。
はっと我に返ったような顔になったから。
許されないことだと分かってはいる。
だけど、一緒にいたい。くっつきたい。また、キスもしたい。
どんどん想いがあふれてきて、苦しい。
「うあぁ……」
ドキドキが止まらなくて、抑え込むように頭を抱えた。
これ以上、わたしは優にぃと会ったらダメだ。
自分を止められる自信がない。
――家に、帰らなきゃ。
彼への気持ちを心の奥に閉じ込め、抜け殻になった状態でわたしは電車に乗った。