世界で一番似ている赤色


「待ってよ!」



慌ててわたしも降りたものの、声は届かない。


いろんな感情が心を突き刺してきて、涙が出そうになった。



自分の唇を指でなぞる。触れ合った感覚がよみがえる。



キス、したんだ。



いっそのこと余韻に溺れてしまいたい。


だけど、罪悪感が押し寄せてきてそれを許さない。


ものすごく幸せなことをしたはずなのに、ものすごく悪いことをした後のような感じ。



もしかしたら、優にぃもそうだったのかもしれない。


はっと我に返ったような顔になったから。



許されないことだと分かってはいる。


だけど、一緒にいたい。くっつきたい。また、キスもしたい。



どんどん想いがあふれてきて、苦しい。



「うあぁ……」



ドキドキが止まらなくて、抑え込むように頭を抱えた。



これ以上、わたしは優にぃと会ったらダメだ。


自分を止められる自信がない。



――家に、帰らなきゃ。



彼への気持ちを心の奥に閉じ込め、抜け殻になった状態でわたしは電車に乗った。


< 87 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop