世界で一番似ている赤色
☆
『綾、話がある』
『わたしも』
優にぃからラインが来て、すぐに返事をした。
会うのは来週の土曜日、場所はなんとなく都会の街にしておいた。
人がまわりにいっぱいいた方が、逆に冷静になれそうだから。
待ち合わせして、ファーストフードでランチをして。
奥に動物園がある、人がいっぱいの公園を2人で歩いた。
あっち美術館あるよ。今、フェルメール展やってるんだ。
何それ。なにかのメールの展示?
違うよ! ってか知らないの? 『真珠の耳飾りの少女』とか描いた人だよ。美術で習わなかった?
知らない。ティッシュの種類かと思った。
それはエリエール! 全然違うじゃん!
いつもみたいにたわいのない話をして、笑って。
公園内を探索して、動物園を一周して、お互い写真を撮りあって。
幸せだった。でも、これで最後。
大きな池を眺めながら、優にぃはぼそりと言った。
「綾。連絡とるのも会うのも、もう終わり」って。
名前の知らない鳥が、水しぶきをあげ飛び立った。
その方向を眺めながら、「うん……そっか」とわたしは答えた。