世界で一番似ている赤色







『綾、話がある』


『わたしも』



優にぃからラインが来て、すぐに返事をした。


会うのは来週の土曜日、場所はなんとなく都会の街にしておいた。


人がまわりにいっぱいいた方が、逆に冷静になれそうだから。



待ち合わせして、ファーストフードでランチをして。


奥に動物園がある、人がいっぱいの公園を2人で歩いた。



あっち美術館あるよ。今、フェルメール展やってるんだ。


何それ。なにかのメールの展示?


違うよ! ってか知らないの? 『真珠の耳飾りの少女』とか描いた人だよ。美術で習わなかった?


知らない。ティッシュの種類かと思った。


それはエリエール! 全然違うじゃん!



いつもみたいにたわいのない話をして、笑って。


公園内を探索して、動物園を一周して、お互い写真を撮りあって。



幸せだった。でも、これで最後。



大きな池を眺めながら、優にぃはぼそりと言った。



「綾。連絡とるのも会うのも、もう終わり」って。



名前の知らない鳥が、水しぶきをあげ飛び立った。


その方向を眺めながら、「うん……そっか」とわたしは答えた。


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