世界で一番似ている赤色
なんとなく予感はしていた。
わたしもこれ以上一緒にいたらダメだと思っていたから。
優にぃも優にぃなりに悩んだんだ、きっと。
と思いきや、理由は意外なものだった。
「父さんの転勤が決まった」
「え。転勤? どこに行くの?」
「インドネシア」
「ええっ!?」
世界地図を思い出せば、場所はすぐわかる。
飛行機だと何時間くらいかかるのだろうか。ネットは繋がるのだろうか。
「出世だよ。父さん、海外工場の工場長になるんだって」
「へぇ。すごいね」
「……俺も、ついていくことなった」
優にぃは柵から離れ、池沿いの道を歩き出した。
その後ろを追う。彼の背中で揺れている黒いリュックはわたしと選んだものだった。
「この前は、ごめん」
「なんで謝るの?」
「何も言わないで俺、先に帰ったから」
兄妹らしき小さな子どもたちが、キャッキャとわたしたちを追い越していく。
手をポケットにつっこんだまま、優にぃはその様子に目をやった。
「ぶっちゃけキモかったでしょ」
「え」
「綾に悪いことしたなぁって」
「…………」
「ごめん」
優にぃは顔を伏せ、辛そうな声を出す。
さっき走り回っていた兄妹は、親に「危ないでしょ!」と怒られ、しゅんとしている。