世界で一番似ている赤色
本当はこのまま、彼の言ったことを肯定して、お別れすればいい。
頭ではそう分かっている。
なのに、できなかった。
謝られたことにカッとしたのもある。
それ以上に、キスされてわたしは嬉しかった。そのことは真実だ。
もう会えないんだったら、最後くらい悪あがきしたっていいでしょ?
「ねぇ、わたしが本当にキモイってドン引きしたと思う?」
「え」
「そっちこそ遊びだったんだ、わたしとのこと。ひどいっ」
普段通りのテンションで、わたしは彼と向き合った。
優にぃはぽかんと口を開き、驚いている様子。
「わたしは嬉しかったよ。たくさんドキドキしたよ。本気だったよ?」
「……綾」
「優は違うの?」
彼に思いっきり詰め寄る。
後ずさりをされ、ざっ、と砂利の音が鳴る。
負けずに彼の目を見続けた。
彼がよくわたしにしてきたように。心の中をのぞきこむように。
「……違くない」
発されたのは、風の音によって消えそうな声。
それは、きっと、ようやく漏らしてくれた彼の本音だ。
感情があふれ出しそうになり、1回斜め下に視線をそらした。そして、
「ねぇ、今日で最後なんだよね。じゃあ思いっきりラブラブしたいなぁ」
普段よりワントーン高めの声を出し、上目で優にぃを見た。