世界で一番似ている赤色


本当はこのまま、彼の言ったことを肯定して、お別れすればいい。


頭ではそう分かっている。


なのに、できなかった。



謝られたことにカッとしたのもある。


それ以上に、キスされてわたしは嬉しかった。そのことは真実だ。


もう会えないんだったら、最後くらい悪あがきしたっていいでしょ?



「ねぇ、わたしが本当にキモイってドン引きしたと思う?」


「え」


「そっちこそ遊びだったんだ、わたしとのこと。ひどいっ」



普段通りのテンションで、わたしは彼と向き合った。


優にぃはぽかんと口を開き、驚いている様子。



「わたしは嬉しかったよ。たくさんドキドキしたよ。本気だったよ?」


「……綾」


「優は違うの?」



彼に思いっきり詰め寄る。


後ずさりをされ、ざっ、と砂利の音が鳴る。


負けずに彼の目を見続けた。


彼がよくわたしにしてきたように。心の中をのぞきこむように。



「……違くない」



発されたのは、風の音によって消えそうな声。


それは、きっと、ようやく漏らしてくれた彼の本音だ。



感情があふれ出しそうになり、1回斜め下に視線をそらした。そして、



「ねぇ、今日で最後なんだよね。じゃあ思いっきりラブラブしたいなぁ」



普段よりワントーン高めの声を出し、上目で優にぃを見た。

< 93 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop