世界で一番似ている赤色
日が傾き、駅へと向かう人の流れに乗る。
改札に行く足取りが重くて、彼の手をぎゅっと握りしめた。
まだ帰りたくなかった。
「綾、離してよ」
「……やだ。もうちょっと」
「俺だって揺らぐから」
心なしか彼の声は震えている。
抱きしめてあげたい。思いっきり抱きしめられたい。
そう思っていると、急に手を引かれ、壁と柱の影になっている場所に連れていかれた。
「……綾」
「優」
お互い、名前を呼び合う。見つめ合う。
「……っ!」
強く抱きしめられた。
わたしも手を回し、彼をぎゅっと包み込んだ。
同じくらいの体温。一緒に早くなる鼓動。
くっついていることが自然で、まるで境界線がないかのよう。
全身で優にぃを感じていると、耳元でささやかれた。
「綾、好きだよ」って。
目の奥がつんと痛む。わたしも優のことが大好きだ。
こんなの悲しすぎる。
どうして、わたしたちは結ばれてはいけないのだろう。