【短編】君だけ見えれば、それでいい。
春が過ぎ、夏が過ぎ、ふたたび秋が巡ってきた。
優馬の様子がおかしくなり始めたのは、夏休みに入ってからだった。
夏休みにいっぱいデートしようねって約束していたのに、結局会えたのは、たった三日だけ。それが一般的に多いのか少ないのかはわからないけど、私には極端に少なく感じた。
二学期が始まり、学校でふたたび毎日顔を合わせるようにはなったものの、ふたりの間に目に見えない壁ができてしまったようだった。
一緒にいても、優馬はどこか上の空で、私に向ける笑顔は明らかにぎこちなく、無理なところがあった。
夏休みの間に何かあったのは確実だった。優馬はその〝何か〟を私に隠している。
私に飽きてしまったのかもしれない。他に好きな子ができてしまったのかもしれない。その子ともうすでに付き合っているのかもしれない。