桜恋色
ウダウダ考えても仕方ない。



「これっ! 観に行ってみない?」



思い切って切り出したわたしに、



椎名くんはわたしが指差したチラシをマジマジと見つめている。



「明日か……」


小さく呟いた椎名くんの顔が険しい。



そりゃそっか……。



仮にも椎名くんは受験生。



彼氏も居ない暇な大学生と同じ感覚で居たらダメだな……。



そう思い直して、



「あはは~。嘘だって! 受験生だし……」


「行きますっ」



「えっ?」



わたしの言葉を遮って、椎名くんが声をあげた。



ぽかんとしてるマヌケ面のわたしに、



「一緒に行きましょうっ」



椎名くんがはにかんだ。



うぅ……。



やっぱり、可愛い……。



身長なんてわたしよりずっとデカいくせに、



笑ってる顔には母性本能をくすぐられる。



いつもは届かない頭を無言で撫でたら、



「ガキ扱いしないでくださいっ」



少し顔を赤くした椎名くんに怒られた。


その顔も可愛い……。



ヤバいわたし!



危ない道に進もうとしてるっ!?
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