桜恋色
「じゃあ……明日は開演一時間前に待ち合わせしますか?」



「一時間前? 早くないかな……」



開演前に早く行けば好きな席は取れるけど、



別に知り合いを観に行くわけじゃないから、演奏さえ聴ければいい気もする。



「……早い、ですか?」



ちょっと困ったように眉を顰めた椎名くんが、窺うようにわたしの顔を見つめてる。



「そんなことないよっ。一時間前にしよっ」



それだけ長く椎名くんと居られるって思ったら、



もっと早くてもいいかも、



なんて思ってしまう……。



五歳も下の、しかも中学生捕まえて何考えるんだか……わたしは。



一人頭の中をグルグルさせてたら、



「楽しみです……」



小さく呟いた椎名くんが柔らかい笑顔を向けてくれた。




それは……演奏会が?



それとも……。



ダメダメ!



自分と会えるのが楽しみなのかも……、



なんて自惚れを必死に頭から振り払う。



「明日……」


「なに?」


「ちょっとだけで良いんで……幼めな格好、してください」


「…………」



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