桜恋色
照れくさそうにポツポツ呟いていく椎名くんに、



わたしは軽いショックに包まれた。



やっぱりわたし……、



椎名くんから見たらオバサン?



一緒に歩くなんて恥ずかしいオバサン?



「やっぱり……二十歳ってオバサン……?」



一人、年下の椎名くんにときめいていた自分が恥ずかしくなって、



半泣きになって椎名くんを見たら、




「ち、違いますっ! そうじゃなくて……俺、兄貴の服とか借りてなるべく大人っぽくするから」




並んで歩いて、吊り合うように見えたら嬉しいと思って……。



弱まっていく語尾を聞き取りながら、




半泣きの目は本泣き寸前。



安心して緩みそうになった目頭を必死に押さえた。



「でも、桜重さん……見た目ほど大人っぽくないですよ」



ちょっと困ったように笑った椎名くんの手のひらが、



遠慮がちにわたしの頭を撫でた。



< 14 / 35 >

この作品をシェア

pagetop