桜恋色
「だからブラスバンド部入って……野球部応援しよって思ってトランペット始めたけど……」



「椎名くん……」



苦しそうに顔を歪める椎名くんに思わず腕を伸ばした。



「やっぱり、野球が良いっ……」



縋りつくように椎名くんはわたしの身を引き寄せた。



小さく漏れる嗚咽も、


鼻をすする声も、



腕一杯に受け止めてあげたくて、



椎名くんの学ランをギュッと掴んだ。



「大丈夫だよ……。まだまだこれからだよ?」



恨めしかった年の差を、



今は利用して大人ぶってる自分が狡い……。



それでも、



「まだまだ可能性いっぱいあるじゃんっ」



年上のわたしだから出来るアドバイスを必死に伝えたかった。
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