桜恋色
帰り道の途中。
「こんばんわぁ」
五年前までは毎日通っていた中学校に立ち寄る。
「あら。白川さん」
人が出払って寂しくなった職員室に、軽く会釈しながら入っていき、
軽く手を振りながら迎えてくれた顧問の先生に小走りで寄った。
「今日は何の楽譜?」
先生の言葉からもわかるように、OGのわたしがここに来たのはつい最近。
サークルで使う楽譜を借りに、今でもこうして寄らせて貰ってるわけだ。
「えっと……今日は」
「失礼しますっ」
先生に曲名を告げようとした声と、入り口からの声が被った。
先生とわたしは、反射的に視線をそちらに向ける。
「先生、鍵……ありがとうございました」
声の主は学ラン姿の男の子。
三年生のカラーである赤のラインが入った名札には「椎名」の二文字。
真っ直ぐにわたしたちの方へ歩み寄って来た椎名くんは、片手に握られた音楽室の鍵を先生へと差し出した。
学ランの裾からはみ出した大きめのセーター。
少し緩く履いてるズボン。
……なんか懐かしいなぁ。
「こんばんわぁ」
五年前までは毎日通っていた中学校に立ち寄る。
「あら。白川さん」
人が出払って寂しくなった職員室に、軽く会釈しながら入っていき、
軽く手を振りながら迎えてくれた顧問の先生に小走りで寄った。
「今日は何の楽譜?」
先生の言葉からもわかるように、OGのわたしがここに来たのはつい最近。
サークルで使う楽譜を借りに、今でもこうして寄らせて貰ってるわけだ。
「えっと……今日は」
「失礼しますっ」
先生に曲名を告げようとした声と、入り口からの声が被った。
先生とわたしは、反射的に視線をそちらに向ける。
「先生、鍵……ありがとうございました」
声の主は学ラン姿の男の子。
三年生のカラーである赤のラインが入った名札には「椎名」の二文字。
真っ直ぐにわたしたちの方へ歩み寄って来た椎名くんは、片手に握られた音楽室の鍵を先生へと差し出した。
学ランの裾からはみ出した大きめのセーター。
少し緩く履いてるズボン。
……なんか懐かしいなぁ。