桜恋色
「椎名くんっ!」



慌てて開いた玄関から、血相を変えて飛び出したわたしを、



「桜重さん……」




椎名くんは力強く抱き締めた。



全身で触れた椎名くんの体は冷たくて、



「もしかして……待ってた?」



椎名くんを見上げて尋ねれば、



「待ってたけど帰ってこなくって……。そしたら電気ついたから」




更に腕に力を込めて、わたしを抱き締める。



「どうしても……桜重さんに会いたかった」



心細そうな椎名くんの声に、わたしの目からはまた涙が溢れ出した。




「昨日、桜重さんにもう来ないって言われて……俺理由わからなくて」




肩を震わせるわたしの頭を何度か撫でた後、



「兄貴に言ったら……俺が中学生で、桜重さんが大学生だからって言われました」



やっぱり、世間の目は、中学生と大学生の恋には厳しいみたい……。



椎名くんの家族にそれを言われたって思ったら、



余計に涙が止まらなくなった。



「どんなに頑張ったって……俺は十五で、桜重さんは二十歳なのは変わらない」



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