桜恋色
朝焼け色の想い
二十代の幕開けの朝焼けは、やたら綺麗だった。



ベッドに座り込んで、朝焼けを見つめていた背中を、




「俺で後悔してませんか?」



毛布と椎名くんがくるんでくれる。



「それ……何回目?」



少しむくれたように上目に椎名くんを睨めば、



困ったように鼻先を掻いた。



「見た目は大人かもしれないけど……俺なんかまだ子どもだし」



「そんなの……わたしのセリフだよ」




朝焼けに背を向けて、椎名くんの素肌に体を寄せる。



「いくら二十歳だって言っても……自分の力だけじゃどうにもならないことが一杯ある。まだまだ子どもだよ。わたしも」



自分にそう言い聞かせて、わたしは椎名くんから身を離した。



「桜重さん」



「なに?」



寂しくなった体を自分の手で軽く抱き締め、



わたしは椎名くんの目を見つめる。



「もう会いに来たりしないって言ったけど……取り消します。大人になったら、大人になった桜重さんに会いに行きます」



こう言って見せた椎名くん満面の笑みを、



この時のわたしは忘れたくないって、



本気で願っていた。
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