桜恋色
「そろそろ……名字で呼ぶの卒業してあげなさいよ? アンタも一緒の名字になるわけなんだし」
振り返った瞳実に釘を刺された。
夜の街に消えていく二人を見送り、踵を返す。
名字かぁ……。
どうも癖になっていて、つい名字で呼んでしまう。
確かに、わたしも同じ名字になるわけだから……、
意識して直さないとな。
なんて、ぼんやり考えながら歩いていたわたしを、
「桜重さんっ」
迎えに来てくれた愛しの彼が呼んだ。
わたしはお酒と幸せで赤らんだ笑顔で走り寄り、
「ただいまっ。温和っ」
胸に飛び込んだ。
「急に何……」
名前で呼ばれて、照れくさそうにはにかむ顔は出会った頃と変わらない。
「だって、今日から同じ名字になるし?」
こう言ってわたしは左手の腕時計を見せた。
十二時きっかりを差す針と、薬指の指輪が月明かりにキラキラ光っている。
ギュッと繋いだ左手には、お揃いの指輪。
一年前の丁度この時に、約束通り大人になって会いに来てくれた椎名くん。
振り返った瞳実に釘を刺された。
夜の街に消えていく二人を見送り、踵を返す。
名字かぁ……。
どうも癖になっていて、つい名字で呼んでしまう。
確かに、わたしも同じ名字になるわけだから……、
意識して直さないとな。
なんて、ぼんやり考えながら歩いていたわたしを、
「桜重さんっ」
迎えに来てくれた愛しの彼が呼んだ。
わたしはお酒と幸せで赤らんだ笑顔で走り寄り、
「ただいまっ。温和っ」
胸に飛び込んだ。
「急に何……」
名前で呼ばれて、照れくさそうにはにかむ顔は出会った頃と変わらない。
「だって、今日から同じ名字になるし?」
こう言ってわたしは左手の腕時計を見せた。
十二時きっかりを差す針と、薬指の指輪が月明かりにキラキラ光っている。
ギュッと繋いだ左手には、お揃いの指輪。
一年前の丁度この時に、約束通り大人になって会いに来てくれた椎名くん。