桜恋色
特別レッスン
次の日の放課後。



楽譜のコピーをしてくれていた部長からの指摘で、



「桜重ちんっ。借りてきてくれた楽譜、トロンボーンのパート譜が抜けてるんだけど」




「……借りて来まーす」



わたしは今日も中学校に寄る羽目になった。



瞳実を付き合わせようと思えば、



「ダメ。わたし今日デート」



一個先輩な彼氏とのデートで断られた。



合コンに行くっていう園花とも大学で別れ、



一人寂しく最寄りの駅に降り立った……。



時間が昨日より早いせいか、人気もまばら。



去年の誕生日に自分で買ったブーツを履いた足元を見ながら、



駅の改札を出たわたしに、



「あの……」



トランペットのソフトケースを背負った、



学ラン姿が駆け寄ってきた。



「あっ……」



椎名くんだ……。



思わず指差して椎名くんを見上げれば、



「これ……先生から」



こう言って、手に持っていたクリアファイルを差し出してくれた。



それは、



「トロンボーンのパート譜っ」



わたしが今から取りに行くはずだったトロンボーンのパート譜だった。

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