ドSで腹黒な先輩に恋しちゃった
『ふざけてないし・・・』



薄く出た涙を袖で拭きながらボソッと呟く。
聞こえる世にわざと。



「別に、リョウちゃんがふざけてるなんて言ってないでしょうが。
俺は」



『少し練習すればできるのにやってないことに怒ってる』



「・・・そこまでわかってるならやれよ。」



こういう状況になるのは初めてじゃない。
先輩が思っていることも、言おうとしている言葉も何となくわかる。
きっとそれは、先輩も同じことだと思う。



『だって』



「別に私は音楽が好きで、ピアノを弾いてるわけじゃないですもん。
でしょ?」



『そこまで分かってんなら怒んなし。』



先輩の真似をして口答えをしてみる。
これを言ったところで先輩が変わるわけがないって、分かってるけど。



わざとらしく口を尖らせて、そっぽを向いてみたりしちゃう。
私だって女の子だ。
たまには女の子っぽいことをしたっていいでしょ。
< 3 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop