最初で最後の愛を君に
「…あー腹痛ぇ…」
「私も〜」
お腹を抱えて笑うのはいつぶりだろうか…
「12年ぶりだな。お前が笑ってるのを見るの」
「……うん、そうかも」
笑ってるけど心では何も感じていない。
作り笑顔に慣れてしまっていて、それが本当の“笑顔”と勘違いしていた。
違う。そう…思い込みたかったんだ…。
「これからもそうやって笑って欲しい。恋して彼氏作って失恋して……」
「ちょっ!勝手に失恋させないでよ!」
「するかもしれないだろ?…そんで大人になって結婚して子ども作って婆ちゃんになって……」
「………」
「最後に『幸せな人生だった』って笑えるようになれ」
「そんなの無……」
「そんで俺に思いで話……楽しかったこと面白かったこと悲しかったこと嬉しかったことを沢山聞かせてくれよ」
無理、と言おうとした私の言葉を遮り話を続ける。
「それが俺の願い」
優しく微笑み私を見つめる彼。
「願い…?それが……?」
「うん。それが俺の願い。叶えられるのはお前だけだぞ」
そう言って彼は私に背を向ける。
「……もう、行くの…?」
「あぁ!お母さん達の様子も見に行かないとだしな!」
振り返ることもなく、話す彼。
見れば少し足が透けている。