予告動画
それから私たちはアパレルショップを数件回って、ランチは駅ビルの中にある日替わりパスタを食べた。
最近は食欲もなくて、なにを食べても味がしなかったけれど、ちづと前園さんと楽しく談笑している内にあっという間にデザートのケーキまで完食していた。
「ねえ、3人でプリクラ撮ろうよ!」
パスタ屋を出てすぐに目に入ったゲームセンター。店内にはたくさんのプリ機があって、私たちは一番最新のものを選んだ。
「うわ、今のプリクラってこんな感じなの?」
撮り慣れていそうな前園さんが無数に設置してある照明にビックリしていた。
「畑さんたちとは撮らないの?」
「撮るならスマホかな。お金かからないし」
「今はそうだよね」
私とちづはクレーンゲームもよくやったりするから、ゲームセンターに来れば必ずプリクラは撮るようにしていた。
ちづは機械の操作が早いので背景やフレームなどは任せて、私たちは機械のかけ声に合わせて何枚も撮影した。
そのあとの落書きはみんなで交代しながらやって、瞳の大きさや涙袋まで調整すると、最早だれ?といったレベルで別人のように仕上がり、3人でお腹を抱えてケラケラと笑った。
プリクラのサイズはスマホケースに入れられる大きさのポケットプリを選んだ。
いつもなら無くさないようにすぐにスマホカバーに挟んでおくけれど、今日は誰もスマホを触ろうとはしない。
スマホは予告動画と密に繋がっているものだから、今日ぐらいは頭から切り離したいという気持ちの表れなのだと思う。
……大丈夫。もうなにも起こらない。
私は誰も動画を再生していないと信じてるから。