予告動画



私も詳しいことを知っているわけじゃない。

だって鈴木先生から聞かされたことは、ただ次の日のホームルームで幾田さんが屋上から飛び降りたという事実だけだったから。

でも、たしか噂では学年主任の先生が発見して、その時にはすでに息はなかったと聞いていた。



「違う。その前に森元が幾田のことを見つけてたんだ。それで……」

井口は言いづらそうに言葉を止めた。



「それで、なに?」

急かすように前園さんが聞く。ふたりが再び顔を見合わせたあと、続きを話したのは武政だった。





「その時にはまだ幾田は生きてたんだ」


……え?



世界が停止したかのように、私たちは呼吸を止める。

雑音が飛び交うアーケード街だからだろうか。うまく言葉が頭に入ってこなくて混乱した。




「え、なに?どういうこと……?」

思わず声が上擦った。





「幾田の意識がまだわずかに残ってる中で、あいつは森元は笑ってその様子を動画に撮ってた」


ドクンッと、心臓が大きく鳴った。


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