予告動画
「幾田にやったことは取り消せない。向こうも私を許す気はないだろうし、私も最後まで謝るつもりはない。……そういう強いままの私で制裁を受けるつもり」
畑さんはそう言って私の瞳を強く見た。
なにも言えなかった。
謝罪をしないと言った理由は、おそらく悪いことをしたと自覚していないのではなく、麻生さんや仲谷さんや磯山さんを殺されたという無念の気持ちも含まれているのだと思う。
今までたくさんの人たちが制裁されてきたけれど、畑さんは自分の死をしっかりと覚悟しているように感じた。
「じゃあね」
畑さんはなんの弱さも見せずに歩きだす。
私はその背中を見送るだけで引き止められずにいると、畑さんは階段を下りる寸前でこちらに視線を向けた。
「最後にひとつだけ言い忘れた」
「な、なに?」
「あんたが親友だと思ってる小島さんって、本当に信用できるの?」
「……え?」
私の思考がぴたりと停止した。
畑さんが私を動揺させるためだけに言ってるんじゃないことは、目を見れば分かる。
「見間違いじゃなければ、中学の時あの子よく夜の街にいた」
ちづは夜遊びをほとんどしない。
私と同じで母子家庭だし、お母さんに心配をかけることさえ嫌がるくらい心の優しい子だから。
けれど、それは今の話。私と出逢う前のちづのことは知らない。
「なんかガラの悪い人たちといつも一緒にいて、その中に森元もいたよ」
「も、森元?」
「あいつここら辺じゃ有名だし、高校に入る前から私は森元のことを噂とかで知ってたからそれは間違いないよ」