予告動画
「きゃああっ……な、なにこれ!!」
「おえ、気持ち悪い……」
冗談ではないと分かった人たちは、逃げるようにして走り去る。
先ほどまで大音量で音楽をかけていた車もぎゅうぎゅう詰めに人が乗り込み、あっという間にどこかへ行ってしまった。
「……ち、なんだよ。根性なしが」
腕を失っても森元は顔色ひとつ変えずに立っていた。
結局、公園に残ったのは私たちだけ。森元は仕方ないという顔で、ゆらゆらとこちらに近づいてきた。
「なあ、動画撮ってくれよ。写真でもいいからさー」
歩くたびに血の道が出来ていく。森元の甘い香水と血の生臭いさが混ざり合い、胃液が喉まで上がってきてきた。
「動画?写真?こんな時になに言ってんの……っ」
怖いけれど、足がすくんで動けない。それはちづも前園さんも同じだった。
「こんな時だからだろ。俺は幾田が死ぬ動画を100回は見たぜ?だから俺も死んでいく様子を残したいんだよ」
森元はやっぱりおかしい。こんな状況なのに、快楽を感じているかのような表情を浮かべている。
「これオノかなにかかな。できるならもっとぐちゃぐちゃにされて殺されたかったけど、幾田も甘いよなー」
うわ言のように森元は空に向かって喋っていた。
「なあ、〝お前〟が生き残るんだろ?」
そして視線を変えたかと思えば、次に私たちのほうに向かって問いかけた。