予告動画
「ハア……ハアッ」
「……ちづ?」
ちづは呼吸の仕方を忘れたようにしゃがみこむ。
「ハアッ……ハア……」
「過呼吸かも。大丈夫。大きく息を吸って」
前園さんの合図に合わせてちづが息を吸うと、なんとか顔色が正常になってきた。
「ちづ、大丈夫?」
喧嘩をしていたことも忘れて、私は背中を擦る。
「……ハア、あず。これって、森元が動画を見てたってことでいいんだよね?だからもう予告動画は再生されないから、誰も死なない。そうだよね?」
返事をするのに間(ま)が空いた。
最後の森元の顔。
あれが、どっちの意味だったのか分からない。でも、これだけははっきりと言える。
今残っているちづと前園さんは、私の大切な友達であり、疑いたくない人たち。
だからこそ、私は信じたい。
もう、予告動画は再生されない。
例え次に予告された人がいたとしても、誰も死ぬことはない、と。
「うん。私もそうだって思いたい」
ちづがわんわんと泣き、私も力が抜けたように座り込む。
そんな弱い私たちのことを、前園さんはまるでお姉さんのようにきつく抱きしめてくれていた。