予告動画
『誰かチクッたヤツがいるだろ?』
すぐに始まった犯人探し。
一軍の人たちを中心にどんどん的が絞られていく中で、私は名指しされないように影を薄くしていた。
結局、麻生さんや森元は幾田さんが先生に告げ口したんだろうと決めつけて、いじめはもっとひどいものになった。
私のちっぽけな正義感で、幾田さんをさらに苦しめた。
あの出来事で火がついて、歯止めが効かなくなり、幾田さんは逃げ道を失った。
だから、私は裁きを受けるべきなのだ。
「木崎さんは私のいじめを唯一止めようとしてくれた」
「違う、私は……」
「色んな先生のところを回ってなんとかしようとしてくれている姿を私は知ってた。だから、木崎さんは殺さない」
幾田さんが濁りのない瞳で言った。
いじめは法律では裁かれないから、罪の意識が薄くて繰り返す。
復讐を遂げた幾田さんも、罪の意識を抱えたままの私も、この苦しさから解放されることはこの先もないと思う。
「本当は明恵の予告動画は用意してなかったの。だから、明恵も死なないはずだった」
幾田さんが私の横を通りすぎて屋上の手すりを握る。そこは、前園さんが先ほどまでいた場所だった。