植物女
私は子どもの頃からずっと息苦しさを感じていました。
どこへ行っても空気が少なく感じるのです。
だからではないのですが、体を締めつける物が嫌いで、すぐに服を脱いで裸になっては母から怒られていました。帽子も頭が締めつけられる感じで嫌いでした。
母は私のことを心配していました。
私は私と同じ女児たちと遊ぶよりも1人でいる方が好きでした。
少し困った顔をしながらも私の頭を優しく撫でてくれていた母は私が小学校に上がる頃、私をある所に連れて行きました。
あれは春だったと思います。
母に手を引かれて桜並木を歩いていると桜の木が『さくらさくら』を歌っていたのを覚えています。
そこには白い服を着た幼稚園の園長先生みたいなおばあちゃんがいて、デスクの上に一輪のピンク色のバラがいました。
「それじゃ識子(しきこ)ちゃん、このバラもなにか言ってるのかしら?」
おばあちゃんは顔を近づけてバラを嗅ぎました。
「くさいって」
「え?」
「ばらがおばあちゃんはくさいって」
「識子!」
母は声を荒らげ、顔をこわばらせたおばあちゃんにペコペコと頭を下げていました。
とくべつがっきゅう、はったつしょうがい。
私には分からない難しい言葉がおばあちゃんの口からたくさん飛び出し、それを聞いている母は萎むようにどんどん小さくなっていきました。
帰り道、桜の木の下で母は私にすがってすすり泣きました。
もう桜は歌っていませんでした。
私は植物と会話をすることができます。
母の言葉よりも子供部屋にあった観葉植物の言っていることの方が早く理解できました。
少しづつ人の言葉を覚えていくのに対して植物の言葉は最初から全てを理解していました。
もしかするとこの世に生まれた瞬間から完璧だったのかも知れません。
ですので不完全な人の言葉で会話するよりも、植物と会話する方が楽でしたし、何よりも楽しかったのを覚えています。
どこへ行っても空気が少なく感じるのです。
だからではないのですが、体を締めつける物が嫌いで、すぐに服を脱いで裸になっては母から怒られていました。帽子も頭が締めつけられる感じで嫌いでした。
母は私のことを心配していました。
私は私と同じ女児たちと遊ぶよりも1人でいる方が好きでした。
少し困った顔をしながらも私の頭を優しく撫でてくれていた母は私が小学校に上がる頃、私をある所に連れて行きました。
あれは春だったと思います。
母に手を引かれて桜並木を歩いていると桜の木が『さくらさくら』を歌っていたのを覚えています。
そこには白い服を着た幼稚園の園長先生みたいなおばあちゃんがいて、デスクの上に一輪のピンク色のバラがいました。
「それじゃ識子(しきこ)ちゃん、このバラもなにか言ってるのかしら?」
おばあちゃんは顔を近づけてバラを嗅ぎました。
「くさいって」
「え?」
「ばらがおばあちゃんはくさいって」
「識子!」
母は声を荒らげ、顔をこわばらせたおばあちゃんにペコペコと頭を下げていました。
とくべつがっきゅう、はったつしょうがい。
私には分からない難しい言葉がおばあちゃんの口からたくさん飛び出し、それを聞いている母は萎むようにどんどん小さくなっていきました。
帰り道、桜の木の下で母は私にすがってすすり泣きました。
もう桜は歌っていませんでした。
私は植物と会話をすることができます。
母の言葉よりも子供部屋にあった観葉植物の言っていることの方が早く理解できました。
少しづつ人の言葉を覚えていくのに対して植物の言葉は最初から全てを理解していました。
もしかするとこの世に生まれた瞬間から完璧だったのかも知れません。
ですので不完全な人の言葉で会話するよりも、植物と会話する方が楽でしたし、何よりも楽しかったのを覚えています。
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