植物女
それから私は植物と話す時はとても慎重になりました。

 それと共にみんなと同じであるように振る舞うようになりました。

 どこそこで買った髪ゴムがクラス内で流行れば仲良しグループの女の子たちと欲しくもないそれを買いに行き、嬉しそうな振りをしました。

 私は子どもなりに周りとの関係を取り繕う術を身につけ、日々をやり過ごしました。



 当時女の子はみんなピアノを習っていました。

 母は私をピアノ教室に通わせました。

「みんなと同じように」

 それが母の口癖でした。

 まるで皆と同じであることが幸せであると、母は信じているようでした。

 それは母の絶対的存在でした。


 
 1度私は父に訊ねたことがありました。

 どうして人は皆と同じにしていなければならないのかと。

 それと絶対的存在のことについても訊きたかったのですが、上手く絶対的存在のことを説明できませんでした。

 父は言いました。

「人は1人では生きられないからだよ」

「ちがったらいっしょに生きられないの?」

「みんなが好き勝手なことをしたら社会が成り立たないだろう」

「しゃかいがなりたたない?」

「例えば信号が赤なのに勝手に横断歩道を渡ったら危ないだろう。みんなで集まって暮らすにはルールが必要なんだよ」

 そういうことではないのです。

 でも私が上手く質問できなかった以上、それ以上は訊けませんでした。

 絶対的存在とは人を支配する巨大な存在なのです。

 肉体だけではなく心まで支配します。

 洗脳と言ってもいいかも知れません。

 絶対的存在の正体は何なのか?

 絶対的存在はある日どのように生まれるのか?

 私は知りたかったのです。

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