コーヒーに砂糖とミルクを注ぐ時

きっと彼は結婚おめでとうと言いに来たんだ。だって彼はもう幸せだから。かわいい彼女がいて、仕事も順調で、本当はこんなところにいていい人じゃない。

「……こんなところにいていいの？あなたの彼女、嫉妬深いじゃない」

冷たくそう言うと、零くんはすぐに言った。

「俺、彼女いないよ」

驚いて振り向く。零くんの目は真剣で、嘘ではないとわかる。もともと彼は誰かをからかったりはしない。

「えっ？あなた幼なじみと……」

「高校を卒業してすぐに別れたよ。…付き合ってるって言っても彼女の一方的な想いだけだったけど」

「どういうこと？」

「彼女さ、『フラれたら、死にます！』って告白してきた時に真顔で言ってて、本当に死なれたら嫌だから仕方なく付き合ってた」

ドクン、と胸が大きな音を立てる。それが何かわからない。

零くんは彼女のことが好きではなかった。それがなんだかすごくーーー。