コーヒーに砂糖とミルクを注ぐ時
私に構わず紫乃さんは話し続ける。

「私と光が両想いになった時には、もう遅すぎた。私は死んで、天国から見守ることしかできない存在になってしまった」

紫乃さんがそっと私の頰に手を当てる。その手は氷のように冷たい。

「あなたのことをずっと見てた。あなたには、後悔してほしくない。今からでも遅くない。……自分の感情と向き合って!」

強い目で見られ、私の胸に何かが走る。頰に当てられている手はとても冷たいのに、そこにたしかな温もりを感じた。

私はその手を払いのけ、紫乃さんに背を向ける。

「あなたには、関係ありません。早く出て行ってください!」

「好きという想いは、どんな形でも同じ。そして、それを伝えられなかった時、大きな後悔だけが残る。あなたが苦しんで泣く姿なんて、見ていられない。……本当は、もうとっくに答えに気づいているんでしょ?」

その言葉が麻痺した心に突き刺さる。真っ黒なコーヒーが揺れる。

「……私は……」

振り向くと、そこに紫乃さんはいなかった。

部屋の静寂に、涙が一筋、こぼれた。
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