コーヒーに砂糖とミルクを注ぐ時
そのまま話は勝手に進んでいき、私と彼は結婚することになった。

結婚式の日も、ドレスも何もかも決まり、私はカフェを閉店させられることになった。

嬉しいという気持ちはどこにもない。その証に、彼がくれたダイヤの指輪は左手の薬指についていない。

私は、結婚する相手のことを愛していない。そんな私が自分の子どもを愛せるのだろうか?

不安を少し感じたような気がした。



この街は十二月に入ると、街全体がクリスマス一色になる。どの店も夜になるとイルミネーションが輝き、小さなクリスマスツリーを飾るところもある。

閉店前日のこのカフェでも、毎年していたクリスマス限定の特別メニューを作っている。お持ち帰りも可能なクリスマスケーキだ。

しかし、寒さがとても厳しいせいかお客さんの姿はあまりいない。しかし忙しいよりはいい。こちらも落ち着いて仕事ができる。

「ねえ、あの人ってさ白井椿だよね?」

「ほんとだ!すごいイケメンがいる。彼氏?」

「私、こないだの劇でファンになったんだよね!サインもらってこよう!」

二人の女子高生がそう言いながら立ち上がり、大人数用のテーブルで男性二人と話している女性に近づく。

女性が申し訳なさそうに二人に謝り、二人が落ち込みながら戻ってきた。
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