コーヒーに砂糖とミルクを注ぐ時
夕方になり、お客さんの数も落ち着いた。店内にいるのは数人ほどだ。

注文されたサンドイッチを持っていった時、カランコロンとベルが鳴る。

「いらっしゃいませ」

ドアの方に顔を向けると、紫乃さんの顔が頭に浮かんだ。

入ってきたのは光さんだった。

「こんにちは……」

光さんが微笑む。私も挨拶をし、笑顔を作る。

光さんを席に案内し、水を出す。しばらくすると、光さんはコーヒーを注文した。

「ブレンドコーヒーです」

「ありがとう」

コーヒーを一口飲み、光さんは何かを思い出したかのようにかばんの中から栞を取り出し、私に手渡した。

「これは……？」

栞は手作りで、薄紫色の花が押し花となっている。

「きれいですね」

そう言うと、光さんは懐かしそうに目を細め、言った。

「夢を見たんです。愛しい人が夢の中で叫んでいたんです。『こら！光！今日はお世話になったカフェが閉店する日でしょ！何かお礼をしなさい！じゃなきゃ不幸の手紙送りつけてやる〜』って…。本当、あの時みたいだ」

光さんの目に涙が浮かぶ。
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